Japanische Klassiker mit Furigana
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トシオのみたもの
トシオの見たもの
岡本 かの子
Lesen Sie トシオの見たもの (トシオのみたもの) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.531 Zeichen · 21 Bildschirme
三
三
「トシオ! トシオ※(感嘆符二つ、1-8-75)」
トシオは斯う呼ばれて、あたりを見廻しました。
何という思いがけ無いことでしょう。トシオの直ぐ傍の欅の瘤根に腰をかけて、真白い髯を房々と手でしごいて居るのは、もう五年も昔に、トシオの家から死んで行って仕舞われたお祖父さんではありませんか。
「お祖父さん。あなたは、死んだお祖父さんではありませんか」
「ハハハハハハ死んだお祖父さんなんて云うか、トシオ! わしは決して死になんぞせないのに」
お祖父さんがトシオの驚きを、大笑いに笑う時、さらさらと波打つ銀の様な髪の毛は、五年前のトシオの家に居たお祖父さんと、少しも変りはありません。しかし、お祖父さんの細くて長いまぶたの下にかがやいて居る瞳は、トシオの家に居たお祖父さんの、鳶色のやわらかさとは違って、まるで、エメラルドをちりばめた様に、青くすきとおった光を放ち、それに、いつも黒い毛皮の上着を、好んで居たお祖父さんが、今日はその髪の毛や髯の色と同じ様な、銀色の着物の裾を長く曳いて、片手に丈高い銀の杖を、しっかり突いて居られるのです。
「ハハハハハハどうじゃトシオ、わしは死んでは居ない証拠に、ちゃんと斯うしてお前の眼の前に、腰かけて居るではないか」