Japanische Klassiker mit Furigana
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トシオのみたもの
トシオの見たもの
岡本 かの子
Lesen Sie トシオの見たもの (トシオのみたもの) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.531 Zeichen · 21 Bildschirme
「ではお祖父さん。今日はお祖父さんの形が、人間になる日に当るんですか」
「なに、今日がその日ともかぎらないのだよ。だが、人間のお前に逢いに来るには、人間の形でなければいけないからな」
「じゃあお祖父さん。あなたはわざわざ僕に逢いに入らっしったんですか。僕に何か用でもあってですか」
トシオは曇って居ると云われたことも忘れて、その眼をくりくり丸くして、一層、お祖父さんの顔をみつめました。お祖父さんはそれを見て、よけい声を高めて笑いましたが、やがてまた、きっと、トシオの方を向いて、今度は厳かに、
「トシオ、まったくだよ。わしはな、神様を忘れて居る人間の中で毎日迷ったり悲しんだりして、不愉快に暮らして居るお前を救ってやろうと思って、今日はまた昔のわしの形になって、お前の処へやって来たのだよ」
斯う云ってお祖父さんは、懐から一つの筒形の眼鏡を取り出して、トシオに与えました。
「さ、トシオ、これをしばらくのぞくのだよ。これをのぞけばお前はきっと、神様を見ることが出来るのだからね」
「そうですか。随分不思議な眼鏡なんですねお祖父さん」
「いや不思議でもなんでも無い。この眼鏡のなかには、人間が始めて神様につくられた時のありさまを、すっかり、フイルムに仕立てて仕舞ってあるのだからな」