Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.011 Zeichen · 23 Bildschirme
と答えると、族長は、
「いや、わかりましたじゃ」といって、薄い唇の上に生えた見事な八字髯をひねりながら部屋を見廻していたが、
「以前はそのへんにいろいろな飾り物がごわしたが、あれはなんとなりました」とたずねた。
「みんな物置きへほうり込んでありますわ」
「ほほう。……鳩が二羽足らんようじゃが……」
「あら、いただいてしまいましたわ。あの一羽は時計の代りに取ってありますの」
「結構ですじゃ。……それから姫鱒の乾物はなんとなりました」
「鱒もいただきましたよ」
すると族長は、腕組みして何か考えていたが、やがて、急に腕を延してたて続けにコニャックをあおりつけてから、
「さぞ美味でごわしたろう」と、凄味のある声でいった。
「あら、お望みでしたら、まだ残っていますからお持ちくだすっていいですわ。ねえ、コン吉、まだ半分くらい残っていたわねえ」
「あります、あります。ちょっと待ってください」
と、いって、コン吉は戸棚の中から、無惨にも胴切りにされた鱒を持ち出して族長の前に置いた。族長はしきりにその頭をひねくり廻していたが、
「さようならばこれはちょうだいいたす。……それから念のために申し上げるが……」