Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとつのあいじょう
一つの愛情
豊島 与志雄
Lesen Sie 一つの愛情 (ひとつのあいじょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.635 Zeichen · 22 Bildschirme
人がみな私のことを世間知らずだと申します。私も人並に生きることを一生懸命に考えました。けれど、どうしても駄目でございます。私は人に触れては、つらい堪え難い痛手を心で受けるばかりでございます。
私はこの世には生きてゆけぬ心を持って生れて来た女でございました。
私はいつまでたっても、この世に浮び上ることが出来ませぬ。それは病気した体の弱いためか、過去に受けた心の傷のためか、それから長い間に歪み縮んでいた不幸な心理状態のためか、私にはわかりませぬ。
けれども、この世にはどこにも、美しい心などありませぬ。私は誰とお話しても、少しも気持がふれ合わないで、それがたまらなく苦しく淋しゅうございます。
そして今はもう、考えることも何もかも精根がつきてしまって、ただ虫のように愚かしい弱々しい心が、次第次第にこの世から遊離して、風と一緒に宇宙に淋しくさまようようになりました。私には今はもう何の希望もございませぬ。あるものは、ぞっとするほど恐ろしい真暗な孤独地獄の闇ばかり。私は日毎にいよいよ虫のようにみすぼらしく哀れになってゆく我身を、どうすることも出来ませぬ。勇ましく生きてゆく気力を失った私に、これから先どのような日々がございましょう。