Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる
一九三二年の春
宮本 百合子
Lesen Sie 一九三二年の春 (せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.942 Zeichen · 44 Bildschirme
ここへわたしも入れられ、向い合って坐った。三方の壁は板張りである。天井を見上げると薄青いペンキ塗だが、何百人もの人間が汗と膏とをこすりつけた頭の当る部分、背中でよりかかる高さのところだけ、ぐるっと穢れて、黒くなっている。女給らしいひとは、わたしの様子をそれとなく見ていたが、しばらくして、
「冷えますわねえ。……私おなかが痛くて」
と堅く冷たいゴザの上で体を折りまげた。
八時になると留置場の寝仕度がはじまった。留置場独特の臭気を一層つよく放つ敷布団一枚、かけ布団一枚。枕というものはない。廊下についている戸棚から各監房へ布団を運び入れるところをみていると、女の方はどうやら一組ずつあるが、男の方は一房について敷が四枚、かけ四枚。それに十人近い人数が寝るのだった。
「旦那。今夜もう一枚ずつ入れさせて下さい。お願いします。冷えると夜中に小便が出たくなってやり切れないんです」
切れた裾が襤褸になって下っている絹物の縞袷を着た与太者らしい目のギロリと大きい男が、そういって小腰をかがめ、看守の返事を待たずさっさと布団を出している。卑屈な要領のよさというようなものが、その男の挙止を貫いている。