Japanische Klassiker mit Furigana
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せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる
一九三二年の春
宮本 百合子
Lesen Sie 一九三二年の春 (せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.942 Zeichen · 44 Bildschirme
ともかく顔を洗い、監房に戻って坐ると、寒さが身にこたえはじめた。七時すぎになると、小使が飯と味噌汁を運んで来た。塗りが剥げ得るだけ剥げきった弁当箱に、飯とタクアンが四切れ入っている。味噌汁は椀についでよこすが、これがまた欠け椀で、箸はつかい古しの色のかわった割箸をかき集めたものである。こういう食いものを、監房の戸の下に切ってある高さ四寸に長さ七八寸の穴から入れてよこす。
駒込署の弁当は、三度とも警官合宿所の賄から運ぶものであるが、請負制らしく、一食八銭の規定が実質的に守られてはいなかった。八十日の間味噌汁はいつも、昨日の昼或は夜のあらゆる残物をぶち込んで煮なおしたものであった。それだから一椀の汁の中から、葱のこわい端が出る。豆腐が煮くたれてこなごなになったものが出る。キャベジの根を切ったものが出て来る。穢い食物である。
昼飯十一時すぎ。夕食は四時過であった。副食物は、粗悪なヒジキ。刻み昆布の煮つけ。大根と悪臭を放つ魚のあら骨とのごった煮。ジャガ薯煮つけ、刻み牛蒡等で、昼、夜と二食同じ副食物がついた。そして、それは大抵二日ずつ繰返される。「がんもどき」