Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かじとポチ

一房の葡萄

有島 武郎

Lesen Sie 一房の葡萄 (かじとポチ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 23.753 Zeichen · 48 Bildschirme

Aozora Bunko

といおうとしたが、どうしても「大変なの」きりであとは声が出なかった。

おかあさんの手はふるえていた。その手がぼくの手を引いて、ぼくの部屋の方に行ったが、あけっぱなしになっているふすまの所から火が見えたら、おかあさんはいきなり「あれえ」といって、ぼくの手をふりはなすなり、その部屋に飛びこもうとした。ぼくはがむしゃらにおかあさんにかじりついた。その時おかあさんははじめてそこにぼくのいるのに気がついたように、うつ向いてぼくの耳の所に口をつけて、

「早く早くおとうさんをお起こしして……それからお隣に行って、……お隣のおじさんを起こすんです、火事ですって……いいかい、早くさ」

そんなことをおかあさんはいったようだった。

そこにおとうさんも走って来た。ぼくはおとうさんにはなんにもいわないで、すぐ上がり口に行った。そこは真暗だった。はだしで土間に飛びおりて、かけがねをはずして戸をあけることができた。すぐ飛び出そうとしたけれども、はだしだと足をけがしておそろしい病気になるとおかあさんから聞いていたから、暗やみの中で手さぐりにさぐったら大きなぞうりがあったから、だれのだか知らないけれどもそれをはいて戸外に飛び出した。