Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぽんのはな
一本の花
宮本 百合子
Lesen Sie 一本の花 (いっぽんのはな) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.709 Zeichen · 55 Bildschirme
「ああ、矢崎さん、お引越し、どうなりました」
と尋ねた。
「いよいよ渋谷ですか」
「ええ。今月一杯で五月蠅いから行っちゃおうと思ったんですが……来月中には移ります」
「須田さんその後どうしていらっしゃいます?」
矢崎は、厭な顔をして、
「この頃出かけないから」
と低く答えた。
「ここ罷めることは、もう決ったんですか」
「決ったでしょう」
黙っていたが朝子の心には義憤的な感情があった。
須田真吉は、編輯部の広告取りをしていた男で、一風変った人物であった。頭の一部が欠けているのか過剰なのか、度外れなところがあって、或る時は写真に、或る時は蓄音器に、最近はラジオに夢中に凝った。ラジオのためには金銭を惜しむことを知らなかった。種々道具をとり集めラウド・スピイカアに趣味の悪い薄絹の覆いをかけたり、それをビイズ細工のとかえて見たり、朝子に会うと、
「一度是非聴きにいらっしゃい、全くそこいら辺のガアガアの雑音の入るのとは訳が違うんです――もう二三日すると、京城も入るようにします、朝鮮語ってえものは一寸いいですね」
嬉しげに話した。実際は、然し決して組立てに成功出来る須田ではなかった。