Japanische Klassiker mit Furigana
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さんあくにんものがたり
三悪人物語
山本 周五郎
Lesen Sie 三悪人物語 (さんあくにんものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.990 Zeichen · 58 Bildschirme
九
「――いいか」
権頭は盟友にこう云って、その襖をぱっと蹴倒した。みよ、部屋には八百助がいる、例のとおり短檠を側に置いて、山吹色の小判を数えている、権頭は刀の柄に手を掛け、天床も裂けよと絶叫した。
「やいそこな男、おれたちは大阪陣で抜刀斬込み隊と怖れられた命知らずの生残りだ、有金そっくり出してしまえ、四の五のぬかすとぶった斬るぞ」
「やあ、――」
八百助は静かに顔をあげた、
「たいそう元気ですな、なにか御用ですか」
「おちついたことを云やあがる、うむ、これを見ろ」
権頭は刀をぐいと抜こうとした、
「この、二尺八寸だんびら物を、――この、びっくりして腰を抜かすな、この二尺……」
顔をまっ赤にしていきんだが、刀はいっかな抜けないのである、権頭は焦った、満身の力をこめ、躯を曲げてけんめいに引っ張った。
「待ってろ、いまこのだんびら物を、――なにくそ、もうひと息だ、――この二尺八寸、びっくりするな」
杢と中将が心配して寄って来た。八百助はにこにこ笑いながら、平然とまた小判を数え始めた。
九
二尺八寸だんびら物、ずらりと抜いて、――洒落や冗談ではない、権頭も杢も中将も本気である。