Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

Lesen Sie 三枚続 (さんまいつづき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 63.572 Zeichen · 124 Bildschirme

Aozora Bunko

一

表紙の画の撫子に取添えたる清書草紙、まだ手習児の作なりとて拙きをすてたまわずこのぬしとある処に、御名を記させたまえとこそ。

明治三十五年壬寅正月鏡花

一

「どうも相済みません、昨日もおいで下さいましたそうで毎度恐入ります。」

と慇懃にいいながら、ばりかんを持って椅子なる客の後へ廻ったのは、日本橋人形町通の、茂った葉柳の下に、おかめ煎餅と見事な看板を出した小さな角店を曲って、突当の煉瓦の私立学校と背合せになっている紋床の親方、名を紋三郎といって大の怠惰者、若い女房があり、嬰児も出来たし、母親もあるのに、東西南北、その日その日、風の吹く方にぶらぶらと遊びに出て、思い出すまでは家に帰らず、大切な客を断るのに母親は愚痴になり、女房は泣声になる始末。

またかい、と苦笑をして、客の方がかえって気の毒になる位、別段腹も立てなければ愛想も尽かさず、ただ前町の呉服屋の若旦那が、婚礼というので、いでやかねての男振、玉も洗ってますます麗かに、雫の垂る処で一番綿帽子と向合おうという註文で、三日前からの申込を心得ておきながら、その間際に人の悪い紋床、畜生め、か何かで新道へ引外したために、とうとう髭だらけで杯をしたとあって、恋の敵のように今も憤っているそればかり。