Japanische Klassiker mit Furigana
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みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
Lesen Sie 三浦老人昔話 (みうらろうじんむかしばなし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.637 Zeichen · 224 Bildschirme
広くもない家ですから、お幾はすぐに女部屋から出て来ました。
「御用でございますか。」
蚊帳越しに枕もとへ寄って来たお幾の顔が、ほの暗い行燈の火に照されて、今夜はひどく美しくみえたので、阿部さんも変に思ってよく見ると、やはりいつものお幾の顔に相違ないのでした。
「誰かそこらに居やしないか。よく見てくれ。」
お幾はそこらを見まわして、誰もいないと云ったが、阿部さんは承知しません。次の間から、納戸から、縁側から、便所から、しまいには戸棚のなかまでも一々あらためさせて、鼠一匹もいないことを確かめて、阿部さんも先ず安心しました。
「まったくいないか。」
「なんにも居りません。」
そういうお幾の顔が又ひどく美しいようにみえたので、阿部さんはなんだか薄気味悪くなりました。まえにも云う通り、お幾は先ず一通りの容貌で、決して美人というたぐいではありません。殊に見得にも振りにもかまわない山出しで、年も三十に近い。それがどうしてこんなに美しく見えるのか、毎日見馴れているお幾の顔を、今さら見違える筈もない。熱があるのでおれの眼がぼうとしているのかも知れないと阿部さんは思いました。