Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Lesen Sie 二つの途 (ふたつのみち) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.102 Zeichen · 104 Bildschirme
額には粘り気のある汗が出ていた。それを拭き取ると、氷嚢をよくあてがってやった。
「苦しかなくって?」
「いいや。」
「それならいいけれど、なるべく静にしているようにって先生も仰言っていましたから。」
「うむ、これから余りお饒舌は止そう。それに……、ああ僕はどうしてこうなんだろう。何か云うと、屹度お前を悲しませることばかりしか口に出て来ないんだ。」
彼は眼を閉じた。眼窩が落ち凹んで、鼻と頬骨とが目立って聳えていた。鼻の下と顎とには、薄ら寒い髯が伸びかかっていた。
「足をさすって上げましょうか。」と信子は云った。
「いや、今別にだるくないから。」
信子は彼の顔を暫く見ていたが、それから、其処に在った雑誌を膝の上に取り上げた。いい加減の所を披いて、見るともなく行を辿っていると、四角な活字の面がちくちくと彼女の眼を刺戟した。その刺戟に馴れてくると、各々の行が静かな波動をなして浮き上ってきた。彼女はその波動に頭をうち任して、何にも考えまいとした。
「信子!」……その声に喫驚して彼女が顔を上げると、啓介がじっと彼女の方を見ていた。
「お前はね、」と啓介は云った、「僕がもし死んだらどうするつもり?」