Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にひゃくとおか

二百十日

夏目 漱石

Lesen Sie 二百十日 (にひゃくとおか) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.466 Zeichen · 60 Bildschirme

Aozora Bunko

しばらくするうちに圭さんの影は草のなかに消えた。

大きな山は五分に一度ぐらいずつ時をきって、普段よりは烈しく轟となる。その折は雨も煙りも一度に揺れて、余勢が横なぐりに、悄然と立つ碌さんの体躯へ突き当るように思われる。草は眼を走らす限りを尽くしてことごとく煙りのなかに靡く上を、さあさあと雨が走って行く。草と雨の間を大きな雲が遠慮もなく這い廻わる。碌さんは向うの草山を見つめながら、顫えている。よなのしずくは、碌さんの下腹まで浸み透る。

毒々しい黒煙りが長い渦を七巻まいて、むくりと空を突く途端に、碌さんの踏む足の底が、地震のように撼いたと思った。あとは、山鳴りが比較的静まった。すると地面の下の方で、

「おおおい」と呼ぶ声がする。

碌さんは両手を、耳の後ろに宛てた。

「おおおい」

たしかに呼んでいる。不思議な事にその声が妙に足の下から湧いて出る。

「おおおい」

碌さんは思わず、声をしるべに、飛び出した。

「おおおい」と癇の高い声を、肺の縮むほど絞り出すと、太い声が、草の下から、

「おおおい」と応える。圭さんに違ない。

碌さんは胸まで来る薄をむやみに押し分けて、ずんずん声のする方に進んで行く。