Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にとうしゃにのるおとこ

二等車に乗る男

豊島 与志雄

Lesen Sie 二等車に乗る男 (にとうしゃにのるおとこ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.342 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

そして彼は次のようなことを話して聞した。

昨年の夏のことです。私のところへ小さな小包郵便が届きました。開いてみると、幾重にも新聞紙に包んだ十枚ばかりの原稿でした。その第一頁にこう書いてあるんです。

このようなものでも小説になりますでしょうか。恐れ入りますが御覧下さいませ。

ただそれだけで、署名も何もありません。小包の表にも、差出人の名前がありません。

私は変な気持になりました。その当時、私はまだ雑誌に創作を発表したこともないし、世間にちっとも名前も知られていないで、ただ一人こつこつ下らないものを書いてるだけだったのです。その私へもってきて、無名の人から原稿を見てくれと送って来たのです。而も処番地も何も書いてないんです。誰だって一寸変な気持になろうじゃありませんか。その上、原稿の文字は綺麗な女文字です。

で私は、狐にでもつままれたような気持で、その原稿を読み初めました。すると……まあ原稿の内容から申しましょう。

それは題も何もない、小品風の小説でした。主人公は、或る空想的な、そして神経質な令嬢です。

その令嬢が――私が――或る晩ふと眼を覚して、余り蒸し暑いので、縁側の雨戸を少し開いて庭を眺めた。