Japanische Klassiker mit Furigana
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にじゅうしんぞう
二重心臓
夢野 久作
Lesen Sie 二重心臓 (にじゅうしんぞう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.188 Zeichen · 129 Bildschirme
「ヘエ。轟氏がお天気模様か何かを見たあとで締りをするのを忘れていたんじゃないですか」
「どうしてどうして。被害者は平生から極めて用心深くて、寝がけに女中に命じて水を持って来させる時に、一々締りを附けさせるし、そのアトでも自分で検めるらしいという厳重さだ」
「それじゃ家内の者が開けて、加害者を這入らせたとでもいうのですか」
「つまりそうなるんだ……という理由はほかでもない。この事務机の右の一番上の曳出に一梃のピストルが這入っていた。それも旧式ニッケル鍍金の五連発で、多分、明治時代の最新式を久しい以前に買込んだものらしい。弾丸も手附かずの奴が百発ばかり在ったが、それを毎日毎日手入れをしておった形跡があるのじゃから、被害者の轟氏はズット以前から何か知ら脅迫観念に囚われておったことがわかる。それが仮りに他人から怨を受けているものとすれば、やはりピストルと同じ位に古い因縁であったばかりでなく、毎日毎日手入れをしておかなければならぬ位ヒドイ怨みであった事が想像出来るじゃろう。ところでその轟氏が恐れている相手が、向うの窓を轟氏の手で開けさせて這入って来たのに、轟氏はそのピストルを手にしておらぬのみならず、自分で窓の締りをあけて導き入れたものとすれば、その人間は被害者の轟氏にとって、よっぽど恐ろしい人物であったという事になる