Japanische Klassiker mit Furigana
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じんがいまきょう
人外魔境
小栗 虫太郎
Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme
地下水が岩塩を溶かしてつくる塩の洞窟だ。マヌエラ、あなたには想像もできまい。まるで月世界の山脈か砂丘のような起伏、石筍、天井からの無数の乳房、それが、光をうけるとパッと雪のようにかがやく。浄らかな……まったくこんな中で死ねれば有難いと思った。
畝もある。なかには氷罅もある。ときどき、雹のようなのがばらばらっと降ったり、粉塩を小滝のように浴びることがある。と、ふとそばの壁をみたとき、思わず私ははっと呼吸をとめた。そこには巨きな粗毛だらけのまっ黒な手が、私を掴もうとするようにぬうっと突きでている。
マヌエラ、これが悪魔の尿溜の神秘「知られざる森の墓場」だ。
類人猿が、じぶんを埋葬にくる悲愁の終焉地だと思うと、私はその壁を無性にかき崩した。すると、その響きにつれてどっと雪崩れる。ああマヌエラ、塩を雪のようにかぶって起きあがったとき、一つ二つ、臨終そのままの姿であるいは立ち、あるいは蹲まり、あるいは腕を曲げ、ゴリラや黒猩々が浮き彫りのように現われてくる。まったく絶えざる水蝕でかわるこの洞窟の中では、これが数百年あるいはなん千年まえのものか。ともかく、塩にうずまってすこしも腐らずに、今日まで原形を保ってきたのだ。