Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme

Aozora Bunko

理学士の彼が教室にとどまらず、とおく海外へながれて西南奥支那へ入りこみ、ほとんどを蛮雨裡に探検隊とともに暮していることは……いかに自然児であり冒険家である彼とはいえ、少々それだけは、首肯しかねる節があるように思われる。

事実、折竹には別の一面があるのだ。彼は、外国探検隊員という絶好の名目を利用して、その都度、西南奥支那の秘密測量をやっている。日本が他日、この地方への大飛躍を試みるとき、その根底となる測地の完成が、いま彼の双肩にかかっている。つまり、外国製地図の誤謬をただし、一度も日本人の手で実測が行われていない、この地方の地図を完璧なものにしようとするのだ。

しかしそれは、忍苦と自己犠牲の精神に富んだ日本人中の日本人、彼折竹を俟ってはじめてなし得ることだ。彼でなければ、誰が事変中の支那奥地へのこのこと乗りこめるだろう。あの海外学会への名声がなければ、誰が外国旗のもとに万全の保護をしてくれるだろう。いま私は、その百万に一人ともいう珍しい男をみている。顔は嶽風と雪焼けで真っ黒に荒れ、頬は多年の苦労にげっそりと削けている。私はなんだか鼻の奥がつうんと痛くなるような気持で、しばらくじぶんの用件をもち出すのも忘れていたほどだ。