Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

Lesen Sie 人外魔境 (じんがいまきょう) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 101.713 Zeichen · 205 Bildschirme

Aozora Bunko

すると、土人が一人飛びついて銃をおさえ、

「旦那、あのゴリラは恩人でがす。殺すなんて、英人の旦那らしくもねえでがすぞ」

土人は、ゴリラのことを“Soko”という愛称で呼んでいる。私は声を荒らげるよりも呆気にとられて、

「なぜいかんのだ。ゴリラが獲れるなんて千載に一遇ではないか」

「それがです。旦那は、野象の穴へ落ちたとき、磁針をお壊しなすったので、儂らは、どっちへどう出たらこの森を抜けられるか、いま途方に暮れているでがす。そこへ、あのゴリラが教えてくれたでがすよ。つまり、おらが歩んでゆく先が北に当るぞちゅうて……」

「そんなことが、お前にどうして分るね?」

「あのゴリラは、いま森の墓場へ死ににゆこうとしているのだ。それが、わしらにはゆけねえ悪魔の尿溜にあるちゅうだ。ゴリラはな、雨が降るとあんなには歩きましねえ。ぼんやりと、手を頭にのせてじっと蹲んでおりますだ。わしらは、幼けなときからゴリラをみてるだが、雨んなかを、死神にひかれて歩かせられてゆくような、ゴリラにかぎって北へゆかねえものはねえでがす」

私にはその悪魔の尿溜の一言がぴいんと頭へきた。事によったら、いまいる我々の位置が途方もなく深いのではないか。