Japanische Klassiker mit Furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Lesen Sie 人情武士道 (しぐれがさ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.700 Zeichen · 51 Bildschirme
五
「加役御免、然しそれはどうして」
「貴公の知ったことではない」云い捨てて行こうとしたが、「注意して置くが、老人がなにか呶鳴っても相手になるなよ、あの人は、ときどき訳もなく呶鳴りたくなるんだ、逆らわずにおけば直ぐに納まる、本心は善人なんだから」
そう云って足早に立去った。
五
菅生川の水が、小春日の暖かい光をあびて、漣をたたみながら流れている。遠く西南のかなたに、城下町の屋根をぬいてお城の天守が、逆光のなかに明るく霞んでいる、至は枯れた葦の茂みの間に腰をおろして、水面に垂れた二本の釣竿を、ぼんやりと覓めていた。うっかりすると眠くなるようなよい日和である。葦切がけたたましく鳴いて飛んだ。作事奉行の加役を退いてから六十余日、あれ以来とみに暇が多くなったので、非番になると彼はこうして釣に出て来る。そう云っても魚を釣るのが目的ではなさそうだ、なにしろずいぶん出掛けて来ているが、まだ小さな鮒を二三尾まぐれ当りに釣ったばかりで、大抵は空魚籠を下げて帰る方が多い。――至は魚たちへお振舞いに行くんですね。と母親は笑っていた。
高い空で鶫の渡る声がした。そして、そのあとのひっそりとした日中の静寂を縫って、韻の高い女の話声が近づいて来た。