Japanische Klassiker mit Furigana
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しぐれがさ
人情武士道
山本 周五郎
Lesen Sie 人情武士道 (しぐれがさ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.700 Zeichen · 51 Bildschirme
六
幸枝は蒼白めた顔を屹とあげた、「……貴方さまは、初めにこの縁談をお取次ぎなさいました、それでお伺い申上げるのですけれど、八木さまはわたくしの良人に相わしいと思召しまして」
「お待ちなさい、拙者が取次いだのはそういう意味ではない」
「いいえ、わたくしの伺いたいのはそのことでございます、八木さまは、幸枝の一生を託してよいお方でございましょうか、もしも貴方さまがそうだと仰有るのでしたら、そうする方がよいと仰有るならば」
「拙者はなにも云いません」至は水面を見たまま遮った、「拙者になにが云えますか、これは貴女のことだ、もう貴女も子供ではない、自分の生涯のことは自分で解決すべき年になっています」
「貴方のご返辞はそれだけですの」
「……これだけです」至は眼を伏せた。
「なにもほかに仰有って下さることはございませんの、わたくし今日は自分にできるだけの決心をして来たのです、小母さまにお願いして、此処へ参ったのは、もっと、もっと御本心を」
至は返辞をせずに、竿をあげて餌を換えにかかった。……逃げるように、幸枝の去ってゆく柔かい跫音が聞えた。
六
母親は間もなく戻って来た。そして娘の姿が見えないので不審そうに、「至、幸枝どのはどうなすった」