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Japanische Klassiker mit Furigana

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しぐれがさ

人情武士道

山本 周五郎

Lesen Sie 人情武士道 (しぐれがさ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.700 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

路地の霜

一

「私が悪いんです。親方が怒るのは無理もないことです」

「そう思うなら帰って頂戴、そしてお父つァんに謝って……ねえ宗さん」

「それが出来ないんです」

宗七は悲しそうに云った。「親方のおっしゃる通りに、石町さんの仕事をすれば勘弁して貰える。けれど、私が悪かったと謝るだけでは、親方は承知してくれやしません」

「では石町さんの御註文をしてあげてよ」

「出来ればします」

「どうして出来ないの。富田屋は宗さんのためにも恩のある人でしょ。無理な仕事なら別だけど、宗さんでなければならない鯉の彫物よ、どうしてお出来になれないの」

「今は云えないんだ、お雪さん」

宗七は意固地な調子でぶすりと云った。

「もう少し経てば分ります。けれども今はなんにも訊かないで下さい。きっと分る時が来ますから」

路地の霜

一

もう霜月であった。

川口町の路地の奥にある長屋のひと間で、宗七は木屑に埋ったまま、丸鑿を片手に呆然と坐っていた。……あれから五十日あまり、めっきり痩せの見える肩と、頬骨の出た顔が、ながい貧と労作をまざまざと語っている。

彫台の上には、荒彫した二寸ばかりの蛙が投出してある。

宗七の眼は、鑿跡のなまなましい荒彫りの蛙をぼんやりと瞶めている。