Japanische Klassiker mit Furigana
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にんげんはんえい
人間繁栄
豊島 与志雄
Lesen Sie 人間繁栄 (にんげんはんえい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.038 Zeichen · 38 Bildschirme
「風流でしょう、橋の上からお月見で……。」
彼は苦笑したが、一寸その側を離れ難い気持になって、橋の欄干に腰をもたせながら、煙草を吸い初めた。二人の女は、彼が側にいるのを一向気に留めぬらしく、先程からの話を続けていった。同郷の者とか以前同じ所で朋輩だったとか、そういった風な親しい間柄で、而もだいぶ久しぶりに出逢ったものらしく、束髪の女が銀杏返の女へ向って、縷々として身の上を訴えていた。男に逃げられて、子供と二人で困っている、その後の処置に就いて、相談をしてるようだった。然し彼は、彼女等の話に耳を澄すというよりは、夜更けの橋の上で彼女等とひょっくり出逢ったという情景に、場合が場合だけに心打たれて、しめやかな淋しい気持で、茫と月の光に浮出してる遠景を眺め入った。黒々とした腰越あたりの山の端から、遠く三浦半島の山々が灰色に浮出して、その右手に満々たる海が、月の光をさらさらと映してる先は急に黝んで、魔物のように横たわっている。その沖の方から、冷々とした風が吹いてきた。
彼が二本目の煙草を吸っていると、銀杏返の女が不意に呼びかけた。
「旦那さん、済みませんが、煙草を一本御馳走して下さいな。