Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃぼてんのはな
仙人掌の花
山本 禾太郎
Lesen Sie 仙人掌の花 (しゃぼてんのはな) von 山本 禾太郎 (やまもとのぎたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.282 Zeichen · 19 Bildschirme
書籍の背皮に光る金文字が気を焦つ閑枝の目にチラチラとうるさく映った。最後の小さな書籍箪笥には鍵が掛っていたが、鍵はその抽斗から直ぐに見付かった。そして其下段の隅に十冊ばかりのノートを発見することができた。それを引出して見ると果して日記であった。その表紙に記された年月によって一冊ずつを繰って見ると、その日記は昭和二年の九月で終っている。一月、二月と順に繰って見た。閑枝の胸は名状し難い感情のたかぶりに波打って、一冊ずつを繰る指先は慄えていた。
だが、五、六、七、八の四ヶ月は見当らなかった。ただ初めの二頁ばかりを記入してあとは白紙のままの九月分を見出したままであった。何度繰返して見てもその四ヶ月分を見出すことができなかった。が、その九月分の中央に一枚のはがきが挟まれているのを発見した。そのはがきは夫に宛てたもので、差出人は加賀片山津温泉場宝来旅館、裏をかえしてみると、
謹啓、御滞在中は万事不行届の段幾重にも御詫申上候、久しき御病気も御本復被遊私方の本懐も之れに過ぎ不申、健かなる御血色にて、御乗車御出発を御見送り申上候私共にとりても、些か御看護申上候甲斐ありと、御尊父様に対しても、肩身の広き思い致候、此上とも何卒御用心被遊候様御願申上候