Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃぼてんのはな
仙人掌の花
山本 禾太郎
Lesen Sie 仙人掌の花 (しゃぼてんのはな) von 山本 禾太郎 (やまもとのぎたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.282 Zeichen · 19 Bildschirme
閑枝は、ツと立上った、そして書架の上にかけていた「仙人掌の画」に手をかけた、が、そっと静かに手を引いてその画に見入った。
「仙人掌」のなかの顔は笑っていた。閑枝は、それに引入れられるようにかすかな笑を頬に浮べながら低い声でなにごとかを話しかけていた。
長い間画に話しかけていた閑枝の顔は、次第に蝋の如くに蒼ざめた。
「仙人掌」のなかの顔は次第に夫の顔に変っていった。
荒々しく額椽に手をかけた閑枝は、またしてもツと手を引いた。
(夫がこう云う画を描くだろうか)と、閑枝は思ったのである。
(七)
結婚後、夫が画を描いたことは一度も見たこともなく、また画を描くと云うことを聞いたことさえもない。
夫がはたして手紙を書いた未知の男であるなら、今日までそれを黙って居よう筈もない。なんのために夫はそれを語らなかったのであろうか。斯う思うと、夫の筆跡と手紙の筆跡とは、似ては居るようであったが、どこかに違ったところがあるようにも思われるのであった。しかし閑枝は、その筆跡なぞを比べてその真偽を究めようなぞとは思わなかった。また夫にそれを確かめて見ようとも思わなかった。