Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりとかぜとゆめ
光と風と夢
Lesen Sie 光と風と夢 (ひかりとかぜとゆめ) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.032 Zeichen · 158 Bildschirme
十四
十四
一八九三年十一月×日
いやな雨もよいの朝、巨きな雲。海の上に落ちた其の巨大な藍灰色の影。朝七時だというのに、まだ灯をつけている。
ベルはキニーネを必要とし、ロイドは腹をこわし、私は瀟洒たる小喀血。
何か不快な朝だ。我を取囲む錯雑せる悲惨の意識。事物そのものに内在せる悲劇が作用いて救い難い暗さに迄私を塗込める。
生は常に麦酒と九柱戯ばかりではない。しかし、私は結局、事物の究極の適正を信ずる。私が一朝眼覚めた時地獄に堕ちていようとも、私の此の信念は変るまい。しかも、それにも拘わらず、依然として此の生の歩みは辛い。私は私の歩み方の誤を認め、結果の前に惨めに厳粛に叩頭せねばならぬ。…………さもあらばあれ、Il faut cultiver son jardin. だ。憐れむべき人間共の智慧の最後の表現が之だ。私は再び私の・心進まぬ制作に立返る。「ウィア・オヴ・ハーミストン」を又取上げ、又もてあましているのだ。「セント・アイヴス」も遅々として進行しつつある。
私は、自分が、今、知的生活を送る人間に通有の、一つの転換期にあるのだという事を知っているが故に、絶望はしない。