Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
「ナニ、妖気? これは不思議!」
「まことに不思議でございます」
「しかし私にはそうは見えぬが。……」
「しかし、確かでございます」
「どういう点が疑わしいな?」
「これは感覚でございます。そこを指しては申されません」
駿河守は首傾げたが、「どうも私には信じられぬ」
「やがてお解りになりましょう」
五
殺人の本人、葉之助へその捕り方を命じたのは、笑うべき皮肉と云わざるを得ない。
辻斬りが絶えないばかりでなく反対にその数の増したのは当然過ぎるほど当然である。
こうして真の恐怖時代、こうして真の無警察時代が高遠城下へ招来された。
冬の夜空の月凍って、ビョービョーと吠える犬の声さえ陰に聞こえる深夜の町を、捕り方と称する殺人鬼が影のように通って行く! おお人々よ気を付けたがよい。その美しい容貌に、その優雅な姿態に、またその静かな歩き方に! 彼は人ではないのだから! 彼は呪われたる血吸鬼なのだから!
しんしんと雪が降って来た。四辺朦朧と霧立ちこめ、一間先さえ見え分かぬ。しかし人々よ気を付けなければならない! その朦朧たる霧の中を雪の白無垢を纏ったところの殺人鬼が通って行くのだから。