Japanische Klassiker mit Furigana
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いちょう
公孫樹
豊島 与志雄
Lesen Sie 公孫樹 (いちょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.764 Zeichen · 20 Bildschirme
」
「その時は持ってゆくさ。俺が植えた木だから構やしない。……銀杏なんかどうだっていいんだ。兎に角、ああ威勢よく伸び上ってるところは愉快じゃないか。」と父は答えた。
その公孫樹が果して雌公孫樹かどうかは、父にも分ってはいなかったらしい。然し父の云う通り、年毎にずんずん大きくなってゆくのは、見てても気持がよかった。移転する折には持ってゆくなどということは、とても出来そうにないくらい大きくなっていた。そして後には父も、持ってゆくとは云わないで、やがてはこの借家を買い取るつもりだと云い出した。それには母も賛成だった。可なり古い家ではあったが、普請も間取りも相当によかったし、表にも裏にも地面の余裕があって、庭もわりに広かった。そして自分の家を一軒所有するということが、何よりも母の望んでいることだった。
そういう風にして、公孫樹は父の「足の皮の養分」を吸って、次第に大きくなっていった。
ところが、僕が高等学校の折、その公孫樹は隣家の火災のために、半焼になってしまった。
十月初めの夜中のことだった。「火事だよ、火事だよ、」という母の声に呼び覚されて、僕は驚いて飛び起きた。