Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅっぽん
出奔
伊藤 野枝
Lesen Sie 出奔 (しゅっぽん) von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.423 Zeichen · 13 Bildschirme
こともできないし、自分でどうしても開かなければならないと信じてすべてのものに反抗して切開いた道の先は、まっくらで何にもない。自分を自由に扱うことのできるよろこびの快い気持に浸ったのは、このまま逃れようと決心した瞬間だけであった。今日まで一日だって明るい気持ちになったことはない。いつも忌々しいと思いながら、肉身というふしぎなきずなに締めつけられて暗い重くるしい気持ちがはなれない。自分ではいくらか上京したら光郎をたよるつもりでも、光郎の気持だってどちらを向くか分らない。考えると不安なことばかりだ。ああいやだどこか人の知らない所に行って静かな死にでものがれたい。どこへ向いて行っても行き止りは死だ。早かれ遅かれ死だもの。どうにでもなれというような気にもなった。もう毎日のことにずいぶん考えも考えたが疲れてしまった。もう何にも考えまいと思い思いやはりそれからそれへと考えは飛んで行った。
「郵便! 藤井登志という人いますか」
「ハイ」
出て見ると三通の封書を渡された。一通はN先生、一通は光郎、あとのはねずみ色の封筒に入った郵便局からのだ、あけて見ると電報為替だ。N先生から送ってくだすったもの、先生からこうしてお金を送って頂こうとは思わなかった。