Japanische Klassiker mit Furigana
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はつこい
初恋
矢崎 嵯峨の舎
Lesen Sie 初恋 (はつこい) von 矢崎 嵯峨の舎 (やざきさがのや) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.226 Zeichen · 39 Bildschirme
また歩き出した。
少年のころは人里離れた森へなど往くのは、とかく凄いように思うものだが、まして不知案内の森の中で、しかも大勢で騒いでいた後、急に一人か二人になッて、道に迷いでもすると、何となく心細くなるもので。自分も今日のようなことにもし平常の日に出遇ッたならば、定めて心細く思ッたのであろう,がしかし愛というものは奇異なもので、(たといこの時自分は娘を慕ッていたと知ッていなかッたにしろ)隠然と愛が存していたので心細いとは思わなかッた,むしろこの娘とたッた二人、人里を立ち離れた深林の中に手を携えていると思うと、何となく嬉しい心持がして、むしろ連れの者に見つからなければいいというような、不思議な心持がどこにかあッて、そして二人して扶けあッて、木の根を踏みこえて走けて往くのを、実に嬉しいと思ッていた,自分は二町ほどというものは、何の余念もなくただうかうかと、ほとんど夢中で走ッて往ッた。すると突然目の前に大きな湖水が現われた。
はるかに向うを見渡すと、森や林が幾里ともなく続いているが、霞に籠ッて限りもなく遠そうだ、近いところの木は梢を水鏡に写して、倒に水底から生えているが、その水の青さ、いかにも深そうだ,薪を積み上げた船や筏が湖上をあちこちと往来しているが、いかさま林から切り出したのを、諸方に運送するものらしい