Japanische Klassiker mit Furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Lesen Sie 十字架観音 (クルスかんのん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.655 Zeichen · 27 Bildschirme
取残されたのは、縛られたままのお秋と、つままれたような余吾之介とたった二人、お秋のこの時の様子は全く言いようもない不思議なものでした。
赤い長襦袢が一枚、後手に縛りあげたまま、脛も露わに投りだされた様子は、眼に沁むような妖しい美しさ。余吾之介も暫くは手を下しかねて、茫然と見入るばかりです。
「あら、何時まで見ていらっしゃるおつもり、恥かしいじゃありませんか」
一塊の赤い物が、くねくねと身を揉むのを見ると、
「――――」
余吾之介は思わず顔を反けて跳び退きました。
「縄を解いて下さいな」
「お」
女が縛られていることに、漸く気がついた余吾之介は、後へ廻って、解こうとしましたが、女の怪しい姿態に魅せられたのか、指がなかなか言うことをきいてくれません。それにしても、何んという厳重な縛めでしょう。
「縄を切って下さいな」
「む」
思い出したように、畳の上へ置いた抜身を取上げると、手首に絡む縄の間へ入れて、サッと切り解きました。
「あッ」
血が、いや、血と見たのは、焔のように白い肌を嘗める、長襦袢でした。
「余吾之介様、私は、私は口惜しい」
縄をとかれると、お秋は伸上って、余吾之介に絡みつくように、その胸に顔を埋めました。