Japanische Klassiker mit Furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Lesen Sie 十字架観音 (クルスかんのん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.655 Zeichen · 27 Bildschirme
九
「いえいえお嬢様、それはなりません」
燃えさかる焔は次第に近づいて、祈りの声は刑場一パイに唸り渡ります。
九
余吾之介が駈けつけた時は、何もかも済んでおりました。五十基の磔柱には焼け爛れた殉教者達の死体を遺して、まだ燃えさかる火を、多勢の人足が湿しておるところだったのです。
あまりの残酷な姿に、見物は中頃から次第に散って、この時はもう、竹矢来の外に殉教者達の身寄の、悲しみに打ちひしがれた姿を残すだけでした。
「お願い申す、拙者も切支丹宗徒の者、御処刑を願いたい」
余吾之介は焼け爛れた五十の死体に引寄せられるように、竹矢来の中へパッと飛込みました。
「これこれ、入ってはならぬ。何、切支丹宗徒だから処刑されたい」
「如何にも」
与力らしい立派な武家の前に、余吾之介は小腰を屈めました。
「これこれ、見れば武家のようだが、とりのぼせてはならぬ」
「何と言われる?」
「切支丹だから処刑されたいと望む者が三百人からあった、恐れ多い事ながら、上様は、お膝元に左様に多勢の邪宗徒があると聞かれたら、さぞお怒り遊ばすであろう」
「――――」
「火を見るとツイ誰でも取りのぼせるものだ、帰らっしゃい」