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Japanische Klassiker mit Furigana

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クルスかんのん

十字架観音

野村 胡堂

Lesen Sie 十字架観音 (クルスかんのん) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.655 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

余吾之介の述懐は、道理であったにしても、気が弱そうで、頼りないものでした。

「それでは余吾之介様、あんまりなお諦めじゃございませんか。最上の御家の仇、御父上の敵が、眼の前で栄耀な暮しをしているのを、黙って眺めていては、御刀の手前――」

「お秋、俺は随分両刀を投げだして、町人百姓にでもなりたい――とつくづく思うことさえある」

「余吾之介様」

お秋は火鉢の向う側からにじりよると、余吾之介の膝に手をかけて、ゆすぶり加減に顔をのぞくのでした。江戸の町芸者らしい、英雄崇拝と、色気が、お秋の全身の血を沸きたたせて、この素晴らしい偶像――松根余吾之介の心――に、好戦の口火を点けずにおかない様子です。

「いや、もう言ってくれるな、俺は臆病になったのだ」

「そんな事があるものでしょうか、余吾之介様。最上藩中、一番の使い手と言われた方が」

「いや、腕と魂は別物だ、俺はもう人を斬ることなど思いもよらない」

「――――」

お秋は黙って男の肩へ手をかけると、その沸り返る全身を叩きつけて行くのでした。

「お秋、それでは又来る」

「あれ、余吾之介様」

お秋の凭れかかる身体を宙に支えて、余吾之介はそっと立ち上りました。