Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
半七捕物帳
岡本 綺堂
Lesen Sie 半七捕物帳 (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.788 Zeichen · 15 Bildschirme
一
嘉永五年八月のなかばである。四谷伝馬町の大通りに小鳥を売っている野島屋の店さきに、草履取りをつれた一人の侍が立った。あしたの晩は十五夜だというので、芒売りを呼び込んで値をつけていた亭主の喜右衛門は、相手が武家とみて丁寧に会釈した。野島屋はここらでも古い店で、いろいろの美しい小鳥が籠のなかで頻りに囀っているのを、侍は眼にもかけないような風で、ずっと店の奥へはいって来た。
「亭主。よい鶉はないか」
「ござります」と、喜右衛門は誇るように答えた。かれは半月ほど前に金十五両の鶉を手に入れていたのであった。
「見せてくれぬか」
「はい、穢いところでございますが、どうぞおあがり下さい」
侍は年のころ四十前後で、生平の帷子に、同じ麻を鼠に染めた打っ裂き羽織をきて、夏袴をつけて雪駄をはいている。その人品も卑しくない。まず相当の旗本の主人であろうと推量して、喜右衛門も疎略には扱わなかった。かれはこの主従に茶を出して、それから奥へはいって一つの鶉籠をうやうやしくささげ出して来た。その価は十五両と聞いて、侍はすこし首をかしげていたが、とうとうそれを買うことになって、手付けの一両を置いて行った。