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Japanische Klassiker mit Furigana

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なんぼくのとうかいどうよつやかいだん

南北の東海道四谷怪談

田中 貢太郎

Lesen Sie 南北の東海道四谷怪談 (なんぼくのとうかいどうよつやかいだん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.555 Zeichen · 34 Bildschirme

Aozora Bunko

お袖はやがて夕飯の準備に庖厨へ往った。直助は其の間に質屋へ往くべく門口へ出た。と、其の時傍の盥に浸けてある衣服の中から、痩せ細った手がぬっと出て直助の足をつかんだ。直助は顫えあがって手にした櫛を落とした。と、盥の手が引込んだ。

「今のは、たしかに女の手だ」

直助が考えこんでいるところへ、お袖が膳を持って出て来たが、直助が落としてある櫛を見つけた。

「姉さんが、大事がらしやんす櫛じゃと云うに、こんなにして」

お袖は櫛を拾いあげたが、やっぱり米屋のことも気になるのであった。

「栄耀につかうではなし、姉さん借してくださいよ」

と云って直助を質屋へやろうとした。そこで直助は、

「そうか、それじゃ往って来ようか」

と云ってお袖から櫛を取ろうとした。と、また盥の中から痩せた手が出て直助の櫛を持った手をつかんだ。

「あ」

直助は驚いてまた櫛を投げだした。が、それはお袖には見えなかった。

「おまえさん、何をそんなに。櫛を何処へやったのですよ」

「盥の中にあらあな、おまえが持ってくがいいや」

お袖は盥の中を覗きこんだが、櫛らしいものは見えなかった。お袖はちょっと其の辺へ眼をやった後で、そっと彼の衣服をつかんで振って見た。