Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
手首に怨む
「ひーっ」
と、寛之助が叫ぶと、斉彬に握られている手も、身体も、力の無い脚も、一度に、病児とは思えぬ程の力で突上げ、顫わせた。脣は、痙攣して、眼は大きく剥き出し、瞳孔を釣上げてしまって、恐怖と、その苦痛とで、半分気を失っているような表情であった。
「寛之助っ」
斉彬は、不意に、力いっぱいに振切ろうとした寛之助の痩せ細った手を握りしめて、がたがた顫えている子供の身体を、片手で軽く押えながら
「父じゃ――見てみい、父じゃ」
と、顔を、幼児の眼の上へ、押しつけた。
「見えんか――寛之助っ、父じゃ」
斉彬の声は、沈黙している部屋中へ響いた。涙声であった。
「七瀬――おそわれると――いつもこうか?」
「はい」
寛之助の脣は、わくわくと開いたり、閉じたり、身体は烈しくふるえているし、眼は白眼が多くなって、次第に細く閉じられてきた。
「まだ脈はあるが――」
斉彬は、医者の方を見て
「何か手当の法が無いものか」
と、口早に聞いた。
「助かるものなら――」
と、低く、呟いて、七瀬の眼を見た斉彬の睫毛には、涙が溢れるように湧き上って来ていた。
手首に怨む
「噂をすれば、影とやら――」
一人が、こういって、隣りの男の耳を引っ張った。