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Japanische Klassiker mit Furigana

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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme

Aozora Bunko

義観は、こう云って、堂の方へ歩み出した。百城は、最後の合掌をして

「綱手殿」

と、云った。綱手は、泣いた醜い顔を、百城に見せたくはなかった。袖で蓋うて、立上った。

床は、ちがっていたが、初めて他人の男と――それも、お互に好意をもっている男と、同じ部屋に寝なければならなかった。

綱手は、正気の無い兄、小太郎の身体を案じ、斬り刻まれた亡骸を埋めている父を悲しむと共に、こうした場合の自分の身躾みについても、細かい用意をしなくてはならなかった。

武家育ちとして、人に素の肌は見せぬものと、教えられていたし、嫌いでない百城の前であったから、風呂で、白粉をつけはしたが、鏡が無かった。

滅入るような、薄暗さと、静けさとの中で、綱手は、鏡無しでつけた白粉の、のり、紅の濃淡、髪の形を気にしながら、百城の前で、じっと、俯向いて黙っていた。

何か、月丸と、話をしたいし――話でもしなくては、耐らなく淋しいし――話しかけても欲しかったが、それでいて、月丸から、話されることを、想像すると、胸が、どきんとした。

(恋であろうか)

と、思うと、いつか、箱根路の闇の中で、益満の身体に触れたことが思い出された。