Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
袋持は、怒りに、拳を顫わせていた。
「この由、御留守居役に、申し上げる」
「うむ、処置は、いかようなりとも、受ける。覚悟は致しておる」
「よしっ」
袋持は、立上って、足音荒く、出て行った。月丸は、すぐ
「惚れてもいる、綱手。然しながら、欺いてもおる。と、申す訳は――」
「お察し、申しておりまする」
綱手は、月丸のいおうとすることが、何んであるか、判っていた。それを、月丸にいわせて、月丸を苦しめたくなかった。月丸が
「惚れていたから」
と、いった言葉で、総て十分であった。仇敵の倅に、肌を許した自分の罪は、死にさえすればよかった。そして、自分が死ぬ以上、月丸を、苦しめたくはなかった。
「察しているとは?」
「父上の同志のことなど、お聞きなされましたこと――」
綱手は、紅い莟のように、ふくらんでいる眼瞼から、愛と、情熱とを込めて、月丸を見た。
「判っておったのか」
「いいえ、あの時は、少しも――只今、判りましてござりまする」
「恨むであろう」
「いいえ」
「憎くはないか」
「少しも――」
「欺くつもりでもあった。欺いても、武士の道には、外れぬ。一つの便法――とも思ったが、既に、その時、心底から、そなたの素直さに惚れておった。