Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
「はいっ」
市助が、走って出た。玄白斎は、咳き入りながら、市助の開けておいた部屋へ入って、行燈の微かな明りだけの中を、手さぐりに、火炉の上へ登った。
廊下に、けたたましい足音がして、三人の門人が入って来た。
「修法を――今から」
「牧を、折伏致す。早く致せ」
火炉の中の、焚木は、いつも用意されてあった。和田仁十郎が、祭壇へ黙祷して、その前に供えてある木切をとって、燧石から火をつけると、すぐ、火炉の乳木へ移した。
玄白斎は、片手を、炉べりへついたまま、首垂れて、肩で呼吸をしていたが
「戒刀を――」
と、微かに云った。市助が、片隅の暗いところから、金具の光るのを持って来て、差出した。
「和田、高木、よく見ておけ」
玄白斎は、静かに、こう云うと、燃え上って来た火焔に、脂肪気の無い顔をさらしたが、すぐ眼を伏せて
「和田、高木」
「はっ」
「わしは、死ぬかもしれぬ」
二人は、返事をしなかった。
「牧が、修法を致しておる」
「又、致されておりますか」
「わしを――呪殺しようと」
「先生を?――」
「旺んな気力じゃ。わしは、この身体で――闘えぬであろう」
三人は、玄白斎の力無げに、俯向いて云っている言葉を聞いて、返事が出来なかった。