Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
玄白斎も、そう云ったまま、暫く、黙って、眼を閉じていた。
(平生から、御壮健な方だから、このまま、よくなればよいが――)
と、人々は思った。
「刀」
「はい」
「何故、持って参らぬ。このままわしを、不忠者として、殺す所存か」
玄白斎は、一寸、頭を仁十郎の方に向けて睨みつけた。
「只今」
仁十郎が立上ろうとすると
一人が床の間から、刀を持って来た。仁十郎は、それを枕辺に置いた。
「起してくれんか」
医者が
「老師、それは、なりませぬ。このまま、このまま」
手を出して、蒲団の上から押えた。玄白斎は、力無さそうに、蒲団から、両手を出して、その手を除けて
「わしを、生かそうと――それは、忝ないが、無駄じゃ」
「左様なことを――」
「仁十、後方から、抱き起してくれ。もう、体力も、気力も無うなった。ただ未だ、腹は――切れる」
人々は、はっとした。刀を持って来いという意味が、初めて判った。
「先生、腹を召すなどと――」
玄白斎は、それに答えないで、身体を横にして、自分で起き上ろうとしかけた。仁十郎と、市助とが、左右から
「先生」
と、云いつつ、抱きかかえた。
「長年わしの下におって、わしの心が、判らんか」