Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
一郎右衛門は、眼を閉じて、暫く、じっとしていたが
「えいっ」
と、叫んで――人々が、その叫び声に、ぐっと、胃の腑を、突かれた時、力任せに、右手へ、掻切ってしまった。と同時に、刀を突き立てたまま右手をがくがく震わせ、左手を、蒲団の上へ突いて、俯向きながら、髪の毛を、びりびり震わしていた。人々は、固唾を飲んだ。
切口は、五分余りも、口を開けて、血に染んだ白い脂肪が、厚い層を現していた。そして、その分厚な脂肪の下から、灰色の大腸が、ちらっと、見えていたが、一郎右衛門が、苦痛に、呼吸を大きくし、身体中に、力を入れると同時に、それが、ぐっと食み出して来た。そして、呼吸をするたびに、少しずつ、押し出されて来て、一管が、切口から食み出すと同時に、すぐ、そのつづきが、だらだらと出て、切口から垂れ下った。
一郎右衛門は、俯向いて、手をついたまま、肩で呼吸をしているだけであった。
「山田殿っ」
一人が、叫んだ。返事をしなかった。
「介錯を――」
一郎右衛門は、首を振った。そして、ついていた手を、膝の上へ上げて、右手の刀を、抜いた。そして、顔を上げようとしたが、暫く、じっと――それは、残りの力を集めて、頸を掻切るためでもあったし、苦痛を耐える最後の努力でもあった。