Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
同じ道に
(叡山へ登って、八郎太の、あの墓の中へ、綱手の鏡を、埋めてやったなら――)
月丸は、己の功名のために利用はしたが、好きであった綱手のために、あの世において、いい目を見せてやろうと、思った。
(鏡――そうだ、当時は、肌につけていたが、いつの間にか――何処へ行ったか――探せば出て来るであろう)
月丸は、二人で登って行った時のこと、お堂のことを思い出すと
(そうだ、あの坊主、あの坊主)
月丸は、悲しい、呪わしい叡山の記憶の中に、黒く、口惜しさの現れてきたことに、腹が立ってきた。
(一太刀でもいい、斬ってやったら――斬って斬れぬことはあるまい)
そう思うと、一つは綱手のために、一つは、己の面目のために、叡山へ登ってみたくなってきた。
(明後日、出立とすれば、中一日、その間には仕事もあるし、重役に願って、五日七日の暇をもらったなら――そうだ、外の者とはちがうのだから――)
月丸は、そう思いながら、部屋へ戻って来た。若い人々は、旅の疲れもなく、何処へか遊びに出たと見えて、一人も居なかった。入ると、何んとなく陰気で、黒い天井に、二人の血が滲んでいるように感じられたし、薄暗い部屋の襖の向うの暗闇の中には、綱手と、七瀬とが、血塗れになって、立っているようにも感じた。