Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
「くそっ」
と、懸声をして、勢いよく、八郎太の墓の方へ、足早に行った。
(死霊だの、幽霊だのと、愚にもつかぬ――そうだ、こういう深山へ入ると、人間の心が、こういう風になるのじゃ。それで、霊山などと――わしは、斉興公へ忠義のために、七瀬を殺したのだ。父への孝行のために、綱手を殺したのだ。何を、心に咎めることがある)
墓は、崖のところに――いつの間にか、草が茂り、土が、落ちついて、下に眠っている人の安らかさを、現しているようであった。
(こんな石に脅えて――心が足りなかったからだ。父も、心の不思議を説くが――)
月丸は、考えてみたが判らなかったし、長く考えもしなかったし、又、出来なかった。墓の前へ、膝をついて、懐中から、綱手の形見の鏡を出した。そして、それを包んである薄い絹をとって、鼻へ当てた。微かな、香の匂のほか、血の香はしなかった。
(何故、さっき、血の臭がしたのかしら――それも、心のせい)
だが、香の匂を嗅ぐと同時に、綱手の肌を、四肢を、思い出した。眼が、頭が、血管が、熱くなってきた。自分以外の世の中での、一番、いい物を失くしたように感じた。
「綱手」