Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
と、云って、鏡を眺めてから
「わしを恨んでくれるな。そちを、決して、欺いたのではないぞ。わしは、そちに、惚れていたが、武士の意地として、仕方がなかったのじゃ。成仏してくれ。お前の、霊の籠っているこの鏡を、父の墓へ埋めてやるから、父の側で――父に抱かれて、安らけく、眠るがいい」
そう云っているうちに、だんだん、涙で、眼が曇ってきた。
(お前の母を、わしが、手にかけたと同様にして殺したが、よく、冥土で、母に、わしの恋の、偽りでなかったことを、話してくれ)
月丸は、頬へ、涙の流れるまま、暫く、眼を閉じていたが
(義観に近い、こんなところで、泣いて、もしも、見つかったなら――)
と、思うと、手拭で、手早く、涙を拭いた。そうして、鏡を、丁寧に、拭って、自分の顔を写してみた。そして
「判るか、綱手」
と、いった。そして、微笑してみて、鏡に写った自分の微笑んでいる顔へ
「判ったか?」
と、頷いてみた。
「今、父の側へ、埋めてやるぞ。これが、別れじゃ。綱手、よく、顔を見ておけ」
月丸は、狂人のように、自分の顔へ、言葉をかけて、又、涙を流した。
「別れるぞ――綱手、別れるぞ」