Japanische Klassiker mit Furigana
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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Lesen Sie 南国太平記 (なんごくたいへいき) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 493.291 Zeichen · 991 Bildschirme
お由羅は、自分の褥を、斉興のために、布いて、自分は、下座へ退った。
斉興の顔は、いつになく、沈鬱であった。お由羅に対しては
「わしも、もう、いい齢だから――」
と、洩らすことはあったが、余人に対しては――斉彬に対してすら、まだ、少しも、衰えたところを見せまいとする斉興であった。だが、斉彬の急死に対して、父の情として――微かにでも、心のやましさを感じている人間の自然として、重苦しい鉛のようなものが、頭の中いっぱいに張りつめ、肚の中いっぱいに、沈んでいた。何う、払いのけようとしても
(わしが、殺したのも同然だ)
と、いうような気がしていた。
俯向いて、廊下から、持仏の間へ入って来た斉興に、お由羅が
「ま、かような陰気臭いところへ――」
と、いつものように、媚びた眼で見上げる顔へ、ちらっと、眼をくれたまま、仏壇の前へ坐った。そして、じっと、燈の閃いている仏壇の中を、眺めていた。
死んでみると、何か、取返しのつかぬ大切なものを亡くしたように思われた。多少いじめてもこんなに早く死ぬとは考えられぬことであった。斉彬が生きているうちは、いろいろの意見の相違、心配、不平などがあったが、死んでしまうと――そして、天下の人々が、一斉に、その死を惜しむのを聞くと、自分に対する斉彬の心づかい、一通りでない苦慮、孝心を聞くと、何んなに