Japanische Klassiker mit Furigana
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めいくんただゆき
名君忠之
夢野 久作
Lesen Sie 名君忠之 (めいくんただゆき) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.683 Zeichen · 32 Bildschirme
「塙代家の禁裡馬術の名誉は薩藩にも聞こえている筈じゃ。身共と孫の扶持に事は欠くまい。薩州は大藩じゃからのう。三百石や五百石では恩にも着せまいてや。ハッハッハッ。大坪本流の馬術も当藩には残らぬ事になろうが、ハッハッハッ。コレ与一……薩州へ行こうのう。薩州は馬の本場じゃ。見事な馬ばかりじゃからのう。乗りに行こうて……のう。自宅の鹿毛と青にその方の好きなあの金覆輪の鞍置いて飛ばすれば、続く追っ手は当藩には居らぬ筈じゃ。明後日の今頃は三太郎峠を越えておろうぞ……サ……行こう……立たぬか……コレ与一……立てと言うに……」
六尺豊かの与九郎に引っ立てられながら、孫の与一は立とうともしなかった。紋付の袖を顔に当ててシクシクとシャクリ上げていた。
「……ヤア……そちは泣いておるな。ハハ。福岡を去るのが、それ程に名残り惜しいか。フフ。小供じゃのう。四書五経の素読は済んでも武士の意気地は解らぬと見える。ハハ」
「……………」
「……コレ……祖父の命令じゃ。立たぬか。伯父様や伯母様方に御暇乞いをせぬか。今生のお別れをせぬか。万一この縺れによって、黒田と島津の手切れにも相成れば弓矢の間にお眼にかかるかも知れぬと、今のうちに御挨拶をしておかぬか、ハッハッハッ。