Japanische Klassiker mit Furigana
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めいくんただゆき
名君忠之
夢野 久作
Lesen Sie 名君忠之 (めいくんただゆき) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.683 Zeichen · 32 Bildschirme
四
お城の南、追廻門、汐見櫓を包む大森林と、深い、広い蓮堀を隔てた馬場先、蓮池、六本松、大体山の一帯は青い空の下に向い合って櫨、楓、紅葉の色を競っていた。
その蓮池の山蔭。塙代与九郎宅の奥庭、落葉を一パイに沈めた泉水に近く、樫と赤松に囲まれた離れ座敷は、広島風の能古萱葺、網代の杉天井、真竹瓦の四方縁、茶室好みの水口を揃えて、青銅の釣燈籠、高取焼大手水鉢の配りなぞ、数寄者を驚かす凝った一構え……如何にも三百五十石の馬廻格には過ぎた風情であった。
その西側の細骨障子には黄色い夕陽が長閑に、一パイにあたっていた。ピッタリと閉切ったその障子の内側の黒檀縁の炉の傍に、花鳥模様の長崎毛氈を敷いて、二人の若い女が、白い、ふくよかな両脚を長々と投出しながら、ギヤマンの切子鉢に盛上げた無花果を舐っていた。二人とも御守殿風の長笄を横すじかいに崩し傾けて、緋緞子揃いの長襦袢の襟元を乳の下まで白々とはだけたダラシなさ。最前から欠伸を繰返し繰返し不承不承に口を動かしている風情であった。仄暗い奥の十畳の座敷には、昨夜のままの夜具が乱れ重なって、その向うの開き放した四尺縁には、行燈、茶器、杯盤などが狼藉と押し出されている。