Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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めいくんただゆき

名君忠之

夢野 久作

Lesen Sie 名君忠之 (めいくんただゆき) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.683 Zeichen · 32 Bildschirme

Aozora Bunko

それから台所の雑巾を取って来て、縁側から仏間へ続く血と泥の足跡を拭い浄めた。水棚へ行って仕舞桶で顔や両手をよく洗って、乾いた布巾で拭い上げた。それから水をシタタカに飲んで玄関の方へ行きかけたが又、思い出したように仏間へ引返して線香を何本も何本も上げた。

血の異臭と、線香の芳香が暗い部屋の中に息苦しい程みちみちた。その中に座り込んだ与一は仔細らしく両手を合わせた。

「開けい、開けい……誰も居らぬか……」

表戸を烈しくたたく音がすると、与一はキッと身を起した。仏壇の折れ障子をピッタリと閉めて、一散に玄関に走り出た。有り合う竹の皮の草履を突かけて出ると、式台の脇柱に繋いだ西村家の赤馬が前掻きするのを、ドウドウと声をかけながら表門の閂を外した。外には紋服の与九郎昌秋が太刀提げて汗を拭いていた。

「おお与一か。昼日中から門を閉てて……慌てるな与一……ヤヤッ、何か斬ったナ……」

と眼を丸くして見上げ見下ろす祖父の手首を与一は両手で無手と掴んだ。

「何事じゃ……どうしたのじゃ……」

と急き込んで尋ねる昌秋を、与一は玄関から一直線に仏間に案内した。仏壇の障子を颯と左右に開いて二つの首級を指しながら、キッと祖父の顔を仰ぎ見た。