Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
たださえ恐ろしい、鼻も唇もない顔が、更に焼けただれて、滅茶滅茶にくずれ流れた様子は、この世のものとも思われぬ。
「何だか変だね。これが本当の人間の顔だろうか」
ふと気づいた様に、恒川警部が妙な事をいい出した。彼は何か思う所あるらしく、死体の上にかがみ込んで、しばらく、死人の物すごい形相を熟視していたが、ヒョイと手を出して、頬のあたりをおさえて見た。
おさえたかと思うと、ビックリして手を放したが、同時に、彼の顔に、非常な驚きの表情が浮んだ。
「アア、これはどうしたというのだ。僕達は、ひょっとしたら、賊の為に、まんまと一杯食わされていたのかも知れない」
彼はそういって、一同の顔を見返した。
人々はその意味を解し兼ねて、目をパチパチやるばかりだ。
「この焼けただれたものは、本当の人間の顔ではないというのさ」
恒川氏は、益々変なことをいう。
一同、思わず賊の恐ろしい顔を見つめたが、見つめていると、段々、恒川氏の妙な言葉の意味が分って来る様に思われた。
だが、果してそんなことがあるのだろうか。あまりにも奇怪な着想である。いつの間にか、空一面、鼠色の雨雲に覆われ、ランチはわき返る波に、たとえば大時計の振子の様に、ほとんどリズミカルに、絶え間もなく動揺していた。