Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
「母さまと一緒に、雲の上の美しい国へ行くのよ。しっかり抱き合って、離れないでね」
「ウン、僕いいよ。母さまと一緒なら死ぬよ」
湧き上る熱い涙が、くっ着きあった二人の頬の間を、にじむ様に拡がって行った。倭文子の喉が、奇妙な音を立てた。歯を食いしばっても、その歯を割って、こみ上げて来る嗚咽である。
「ではね、お手々を合わせて、心の中で神様にお祈りするのよ。どうか坊やを天国へお連れ下さいましってね」
アア、何という、ふさわしいお祈りであろう。場所は、棺桶の中なのだ。その棺桶も、ちゃんと火葬の炉の中に納まっているのだ。古往今来、この様な場所で、神様にお祈りを捧げた人が、一人でもあったであろうか。
そして、無情の時は、容赦もなくたって行った。一時間、二時間、だが、まだやっと日が暮た時分だ。石炭が焚かれるのは、夜更けてからというではないか。
「母さま、僕、死ぬ前に、ほしいものがあるの」
ふと、茂少年が、妙なことをいい出した。
それを聞くと倭文子はギョッとした。
母を困らせまいと、どんなにか我慢に我慢をして来たことであろう。考えて見ると、二日にわたる絶食である。大人の倭文子さえ、痛みを感じる程も空腹なのだ。