Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじょう

地上

島田 清次郎

Lesen Sie 地上 (ちじょう) von 島田 清次郎 (しまだせいじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 175.250 Zeichen · 350 Bildschirme

Aozora Bunko

な、分ったろうな」

冬子はただ首肯いて見せた。自分を道具に見ている老獪で卑しい市長を悲しく思わぬでもなかった。が、わけを聴いてみれば「自分の今の境遇と今の世間」では、寧ろ「光栄」であるのかも知れない。無限な人生の流れゆく相の一つ、その一つに冬子は自分の運命、お光母子の運命を負って流れ這入ったとは知らなかった。

「冬子さん、どうぞこちらへ来て頂戴」

女中が先に立った。幾度も通ったことのある畳廊下を冬子は沈着いた心持で歩くことが出来た。重厚なやや古びた造作が親しみ深い。そして川風がせせらぎの音につれて、そよ/\と流れ入って来た。大河を後ろに控えたこの家の好い座敷は、河流に近くとられてあった。やがて蒼い夜空、輝く星辰、水晶のような透明な山岳のうねりがくっきりと河流を越えて浮き出て来た。深い崖上に突き出た縁側へ、崖下の暗い森林の静寂から湧くように河瀬のせせらぎが昇ってくる。そして一室から漏れる明るみの流れが森林の上に映っている。(どんな男があの部屋に自分を待っているのか)冬子は暫く立ち止まらずにはいられなかった。(ああ、希わくば尊敬するに足る男であってくれ! せめては心からお辞儀の出来る男であってくれ!)幾年の勤めの間に、絶えず裏切られては来たもの、あきらめ切れない「女としての」